『三歩進んで二歩下がる』

 

これを書いてる今は、四回目の通しが終わり1時間半かけて帰宅して撮り溜めておいたNHKの『ドキュメント72時間』見つつ缶ビールと蒸したジャガイモをマヨネーズでつまみにしながら、ああ今日も失敗しちゃったなあ、昨日の通しがちょっと良かったからってすぐ慢心して、今日は端から集中力高め切らずに見切り発車して案の定つまずきまくって周りのリズム乱して迷惑かけちゃったなあ、最後は履いちゃいけない履き物を履いて出ちゃったりとか嗚呼(泣)、、、とうなだれてグビリ、とはいえ思い切り失敗できるのは稽古場だけだ!と自らを慰めまたグビリ。それもあと二日だけどねグビリ。

思えばタテヨコ企画『ゾウとパンダと見えない虹のはなし』に集い稽古を始めて一か月以上過ぎた玄白。
にしてもタテヨコ企画。彼らを知る知人からは「タテヨコは稽古期間が長いよ」と言われたが、いやいや自分ら風煉ダンスじゃそもそも私の台本が遅くて遅くておまけに大半の時間を大道具小道具造りに費やしているもんだからまともな稽古時間がいつもきわめて短い。だからタテヨコ企画の稽古時間は「芝居を作るのにはこれくらいの稽古時間を費やすのは当たり前のことでしょ」と感じさせてくれるのだ。いや自分らと比べるのは大間違いさ御免なさい。
横田さんの描く何気ない日常を丁寧に丁寧に追いつつ、でもそこに現れる人間のおかしみをこれまた丁寧に丁寧に追っていったら、そりゃあどんだけ時間があっても足らないわさ。そう稽古が長いのにはちゃんとワケがあるし私も毎日が発見?発見!発見の会だし、何よりそれが楽しいんだから。

延々と繰り返し繰り返してちょっとずつついてくる脳の筋肉のようなものを感じつつ三歩進んで二歩下がる。横田台本に多用される「え」の言い方にも100通りの発語の仕方があるし、どれを選ぶか繰り返し繰り返しやらなきゃ分からんのだ。

だからこの楽しい稽古が永遠に続くかと思ったのだが永遠に続く稽古はない。
いつか必ず本番がくる。
そうあと五日後には泣いても笑っても観客を前に本番の舞台に立っているのだ。
この写真の方々と共に。
きっと笑おう。

 

林周一