今村裕次郎について本当のことを言う (青木柳葉魚)

本当のことを言うと。
彼のことをずっと年上だと思っていた。
 
舘座長がソラカメの公演で共演していたこともあり、今村さんのことはだいぶ前から一方的に知っていた。小松台東の公演もそれなりに観ているし。
去年、僕はある公演に日替わりキャストとして出演した。
お経を唱えてただ通り過ぎるだけなのだが、大先輩方がやっている公演だったのでド緊張した。
その際に、衣装の準備をしてくれたり、出のタイミングを教えてくれたり、お茶をくださったりあれやこれやとお世話してくれたのが今村さんだった。
とても細やかで親切ですごく好印象だった。
でも、
本当のことを言うと、この人何考えてるか分かんねぇな。怖ぇな。
とも思った。
いい人すぎる。おかしい。
 
『橋の上で』の題材を決めて資料を読んだ時、すぐにキャストイメージが決まったのが今村さんだった。
大ベテランだし、売れっ子だし、難しいかなと思ったけどお声がけしてみた。
出演してもらえることになって。一つ理想が叶ってうれしかった。
今村さんのイメージで台本を作れるようになってとても書きやすくなった。
役は「新聞記者 55歳」
 
今一度本当のことを言う。
それくらいの年齢の人だと思っていた。
どうやら割と若いらしいと徐々に周囲から情報が入ってきた。脂汗が出た。
そして実際の年齢を知ったのが昨年末だ。
まさかの、
年下かよっ!
 
僕は特に年功序列を重んじる人間でもないのだけど、年上の男性が苦手な傾向がある。
だから、本当のことを言うと今村さんがちょっと苦手だ。
年下なのにいくら考えても年上な感じがする。
稽古中盤から「今村さん」と呼ぶのをやめて「裕さん」と呼んでいる。
先輩と距離を詰める時のような気の使い方をしている自分がいる。
あと、彼が語る過去の経験談がすごく面白い。
だけど時代設定がちょっとバブル期っぽく感じるときがある。
 
もう本当のことを言わないわけにはいかない。
彼は絶対に年齢詐称してる。
怪しい。
そしていつもいい人すぎる。
黒い。
絶対にこの人は黒い。
 
どんな役をお願いしてもきっちりこなしてしまう人だ。そして圧倒的に面白い。さらには作品や演出にも的確な指摘をくれる。
作り手も観客も彼の芝居や人柄に様々な想像を搔き立てられるんだと思う。
売れっ子なのも頷ける。
 
劇場まで今村裕次郎をぜひ観にきてください。
凄いです、マジで。
とハードルを上げておく。